誤用を指摘するかどうかで迷う

意図的な誤字脱字があるように意図的な誤用もあるわけで、それに対してつっこむのはとても勇気がいるわけなんですけども、特に「すべからく」の用法については判断に悩むケースが多い。「すべからく」の正しい用法は「政治家はすべからく襟を正すべし」みたいに、最後に「べき」とか「べし」がつくことになっている。そんでこれは「政治家は全員襟を正すべきだ」という意味ではない。すべからくは「全て」という意味ではない。「すべからく○○すべし」という一種の定型句だ。つまり、「政治家はすべからくバカだ」という用法は誤りで、この場合は「政治家は総じてバカだ」とか「政治家は概してバカだ」とか「政治家はおしなべてバカだ」と書くべきところ。

で、一時期俺はこの指摘をことあるごとにやっていてその度に煙たがられていたのだけど、最近はやらないようにしている。なぜかというと、世間の誤用指摘ブームが過ぎ去り、今は「すべからくの誤用を指摘するのは無粋」という静かな圧力がこの世を支配しているからです。「別にいいじゃん、全てって意味で使ったって」という勢力が力を増しており、あろうことか正しい用法を知る者までわざと誤用をして、その誤用を指摘する俺みたいなヤツの無粋をあざ笑うというケース、いわゆる釣りが横行している。非常に生きにくい時代が到来してるのです。みんな気をつけて! 自分に負けないで!