バイトのお話し

飲食店での長い長いバイト生活のときにですね、「ただ単に長い」っていう理由で、新人の教育を任されるわけです。

バンビーノでもやってたけど、調理とホールって、全然違うじゃないですか。なんつーの? 調理って、「俺の技を盗め」的なさ、「教えてもらおうなんて考え自体が甘ぇんだよ自分で考えて自分で仕事みつけろよタコが」的なさ、「何も教えはしねえけど、俺の仕事の邪魔になるようなことをしやがったらローキック入れんぞ」的なさ。ばっかじゃねえの。なにそれ。ちゃんと教えてやれよ、と思います。

ほいで俺はホールの人間だったので、いちようちゃんと手取り足取り教えるわけです。仕事の手順とかは初日で一通り誰でもできちゃう。だって誰でも出来るような仕事だから、アルバイトなわけだし。でも接客に一番大事な何かがなかなか身につかんのね。ほいで、やっぱ自分もそうだったからわかるのだけど、最初って「いらっしゃいませー!」の一言すらも、こっぱずかしくて大きな声で言いにくいみたいな感じがあるじゃないですか。その役割になりきれない自分がいるっていうか。あるいは「俺は金が欲しいから仕方なくバイトしてっけど、本当の俺はここにいる俺じゃねえから。本当の自分を失わないためにも、薄気味悪い猫なで声出して客に媚び売りたくねえから」みたいなことだったり。こらー! ばかー!

俺はバイトの先輩なわけで「おまえそういう「いらっしゃいませ」じゃお客さんが気分わりいだろがい。なんでそんな仕方なく言ってまーすみたいな、お役所仕事みたいな、事務的いらっしゃいませなのよ」って小言を言ったりするんですけど、そういうこといくら言っても、そいつのいらっしゃいませが向上することってほとんどないのね。ただ単にいらっしゃいませの声がでっかくなってくるだけで、1ミリたりとも心がこもってないっていう。そんで俺があんまり口うるさく言うもんだから「心こめろって言われても無理っスよ。仕事でやってんのに、心の底から歓迎とかできるわけないじゃないスか」とか逆ギレ始まったり。

「じゃあさ、これは単なるテクニックとして教えるけどさ、おまえの学校の仲良い先輩が来たと仮定して挨拶してみろよ。そういうのいなかったら誰でもいいわ。地元の小学校のときの友達とかさ、なんなら夏休みのときだけこっちに遊びに来てた田舎の優しい従姉妹のお姉ちゃん(巨乳)とかでもいいから。そんで偶然ばったり会ったっていうシチュエーションコントでさ。コント? つーかそしたらおまえそんな仏頂面しねえだろ絶対。「おー! 山田先輩! めちゃめちゃ久しぶりじゃないスか!」とかすげえいい笑顔で話しかけんだろ。表情とか心持ちはそのままで、セリフだけ、いらっしゃいませに変えるんだよ。どうしてもそういうイメクラみたいなことができないっつーなら、そういう人をここに呼べ。実際に。そんで、その人の飲食代、おごってやれ。店に内緒でケーキ出すくらい誰も文句言わねえから。そんで、そん時の接客態度を、他のお客さんにもしろ。もちろん言葉使いはちゃんとしなきゃいけないけど、心の中では「おーよくきたなー、ちょっと待っててな、今席に通すから」って友達に対する気持ちと同じように接するんだよ。わかったか小僧」

大体これでうまくいく。見違えるように接客がよくなって、そうするとお客さんの方もこちらに対して感じ良く接してくれるようになるから、プラスのスパイラルに突入するわけです。接客することそのものが楽しく感じられてくるっていう。

で、何が言いたいかっつーと、うちのそばのファミマの店員すざけんな、ってことです。なんなのあの態度は! キー!!