『ハプニング』はなぜダメだったのか

今から『ハプニング』がなぜダメだったのかをちゃんと詳しく言いますけど、まずは今まで俺が東日本一のシャマラン好きとして生きてきた証を提示しておきたい。

とにかくシャマラン作品が貶されるときは決まって「オチがひどい。シックスセンスよもう一度」とか「シックスセンスは単なるフロックだった」となるのが通例なのですけども、俺の中ではオチで魅せるオチ映画は無粋なものとされているので、そこは今回の主眼じゃないのです。オチがひどいのはもう毎度のことなのでいい加減慣れてください。

今回ひどかったのは、なんかもう書くのもいやになってくるけど、んー、全部? 全部ダメでした。シャマラン作品に特有の、(ある種驚愕の)(ある種腰砕けの)ラストまで引っ張る、繊細な演出テクみたいなものが、ぐっだぐだになってるんですよね。だからもう開始10分後くらいには「なんか今回ダメだぞ」ってなってた。

散漫なんですよ。静かな緊張感がない。ガヤガヤと人が騒いでいて、一体何に騒いでいるのかという丁寧な描写もなく、時折とってつけたように大音量と突然のパンでびっくりさせたり、えげつないグロ描写でおどかしたりするだけっていう、下手なホラー映画そのもののグダグダ演出。一体あなたは何が描きたいのですかとしか言いようのないとっちらかったストーリー。それにくわえて主人公の役者さんの大根演技。

そんで、俺が毎回シャマラン作品を絶賛してきた最大の理由である「B級素材の丸出し」に関してですけど、これが今回決定的にダメでした。もう腹立ってるのでネタバレしちゃいますから、まだ観てない人(観なくていいけど)はこの先読まないでください。あと誰か俺の代わりにシャマランさんを守ってあげて! お願い!
「環境破壊によって植物が人間を狂わせる毒素を放出し始めた! これは単なる警告にすぎないのかもしれない! 本当の恐怖はこれからかも!」っていう、本来なら映画として丁寧に描写しなきゃいけない最大のポイントをね、劇中のTV番組のコメンテーターに、ラスト付近でそのまんましゃべらせちゃってんのね。おまえは新人漫画家か。説明セリフか。

結局ストーリー上ではそれを観客に理解させることができない、と判断したから、こうやってセリフにしちゃったわけでしょ。理解させられないと判断したんなら、そんな題材は少なくともエンターテインメント映画にすべきじゃないんですよ。

この映画には、幽霊(シックスセンス)も、不死身の超人(アンブレイカブル)も、宇宙人(サイン)も、魔物(レディ・イン・ザ・ウォーター)も出てこない。何も出てこない。出てくるのは風でざわめいてる木々だけ。うわーこわいー。逆の意味でこわいー。いっそ、植物が「がおー!」っつって物理的に人を襲い始めてたら俺は手放しで誉め称えてましたよ。B級素材を臆面もなく丸出しにするのがシャマランさんの良さなのに!

『ヴィレッジ』はシャマラン作品としては珍しく超常現象のないオチ映画だったので俺はちょっと「ダメかも」と思ったりしたんですけど、でもこの映画は丁寧な演出のおかげで最後まで緊張感を保つことが出来てたんですよね。でも『ハプニング』にはそれすらもない。オチがひどいとかじゃなく、オチそのものがない。何もない。あるとすれば「環境破壊をやめましょう☆」みたいな、もうお腹一杯っていうバカエコ? これはいくらシャマラン信者の俺でも擁護のしようがないです。

坊主憎けりゃ袈裟までで、余計なところにまでケチをつけますけど、あとね、普通に映像が美しくない。せっかく草原とか撮ってるんだからさー、映画監督として、美しく見せるべきじゃないですか? 恐怖演出の邪魔になると思ったのかもしれないけど、ヴィレッジでは美しく撮れてましたよ。

唯一、本当に唯一よかったのは、なんか目が泳いでる奥さんの気持ち悪い演技? それすらも噛み合ってなくてストーリーの邪魔になってた気がしますけどもね……。でも次も観ますよ。まだだ。まだ終わっちゃいない。