小説とファッション

小説で、ファッションがダサくて萎えることが多い。特にハードボイルド小説。タバコくわえてかっこつける前に服を何とかしろよと思ってしまう。

新宿鮫』や最近だと『天使の牙』の原作で有名な小説家の大沢在昌さんはメガネに七三分けであまり締まっていない体型で、どちらかというと「娘の運動会ではりきりすぎて腰を痛めてしまう、いつまでも気持ちだけは若いつもりのお父さん」といった風情なのだけど、売れっ子作家になる前(20代の頃)から六本木を舞台にした探偵モノをよく書いていて、雑誌のインタビューなどでも「昔はよく六本木で遊んでいて云々」「俺の時代は六本木と言えば云々」「慶應の悪友と六本木で云々」と、ことあるごとに六本木で顔だったことを強調していて、実際どうだったのかはよくわからないけれども俺の印象としては、本当はあんまり遊び慣れてないのに殊更遊んでいた事を強調したがる人という感じで、その思いを強固にした最大の要因は、大沢さんが描く「かっこいい探偵」が例外なくスラックスを履いているということ。確かに他の小説家が描く探偵もスラックスは履いているのだろうけど、「スラックス」という表現はかっこ悪いからしないわけで、そこらへんの用語に無頓着な大沢さんは、47歳という年齢を考慮に入れてもやっぱり六本木の顔としてスマートに遊んでいたとはとても思えない。そもそも六本木という街のセレクトがおっさんくさい。あとBMWに執着があるのもやっぱりちょっとズレてる。原りょうさんが描いた沢崎探偵は古ぼけたニッサンブルーバードに乗っていてそれが逆にかっこよかったわけなのだけども、六本木にBMWでは単なるバブル親父でしかないわけですよ。つまり初期のDIME層が大沢さんという話。

あと大沢さんは大学時代に年間500冊だったか1000冊だったかの小説を読んだと豪語していて、それが本当なのだとすれば六本木で毎日夜遊びする暇など到底なかったと思う。あと"ギロッポン"は逆張りでかっこいいので注意。