シガテラ

シガテラ(1)そんで『シガテラ』の方なのですけども、すんげえ長くなりそうですけども感想を書いてみたりしてみたりしてみます。まだ未完の物語なので、いじめられっ子の復讐とか不穏な空気の方の流れを無視して。あと読んでない人にはわかんない話でごめんなさい。皆さんはインターネッツと漫画の先輩で、こんな事言うのは失礼ですけど、失礼を承知で言わせて貰えば、まだシガテラ読んでないおまいら黙って読め、いい漫画だから。

南雲さんという女性の存在がどうなのかっていう話で、現実問題アレだけ可愛くてアレだけ楽しい子が、ほっといても向こうからやってくるみたいな奇跡は有り得ないわけなのですけども、どこまで頑張っても男である作者・古谷さんには女性の気持ちは分かり得ないわけで、南雲さんは男側から見た女の理想像であり記号であるというところから出発しないとダメだと思った。どういう記号なのかというと、脆い男(というか大体において男は脆すぎなわけですけど)に自信をつけさせてくれる装置というか、装置って言うと何か寒々しいのですけども、ある時期、男の成長に欠かせない存在みたいなアレだと思った。

中学生高校生くらい(人によっては大学生とか社会人になっても)の時期に女の子と付き合うというのはある種恋愛と似て非なるもので、単に男が女に対して自分の存在を認めてもらいたいという子供みたいな衝動と、あと性欲がないまぜになってて、割と女の子の存在がないがしろにされがちなのですけども、でもそういう時期に自分をどこまでも認めてくれる博愛主義な女性がいるとどんどん伸びるわけですよ男は。この子は伸びるよー的に。その博愛主義の女性が、誰もが羨むような素敵な女子なら言う事はなくて、つまり南雲さんはそういう存在の極点に位置してる。これが記号。現実にはあんな女性は存在しないし、純粋培養の想像上の生物ですよ。

ちょっと昔の少女漫画、それも低年齢層向けの少女漫画では「今のままの君でいいんだよ」っつーのがキーワードなわけなのですけども、実は女子よりも圧倒的に男子の方がこの言葉を望んでたりして、んでも現実はそれじゃダメなんだってことも男子は薄々感づいてて、シガテラで言えば主人公の荻野君は高校生になってバイクに興味を持つわけですよね。つまり今のままのウジウジ男子ではダメだということが、シガテラにおいては冒頭でバーンと出ているところがなんかいいんだと思う。

バイクに乗るには免許がいる
免許を取るには金がいる
そしてとうとう去年の夏から僕はアルバイトを始めた……

そう……僕は生まれて初めて自分から動き出したんだ

誰かに「やれ」と言われたワケじゃなく……
100%己の意志で

快挙だ

バイクはつまり内向きから外向きへの方向転換機の役割を果たしてて、荻野君がただのいじめられっ子の冴えない少年ではなくて、外向きで少しずつ成長しつつある人間だというところに意味がある。だからこそ南雲さんと知り合えたわけで、現実世界で今冴えない状態にあるシトに対しての応援歌になってる。これがもしも、荻野君が本当にどうしようもない冴えないクズで、それにも関わらず南雲さんみたいな理想の女の子と上手くいってしまうのだったとしたら、ご都合主義のくだらない漫画なわけですよこれは。赤松健さんが描くようなオタク(存在としてクズではないけども)に都合のいい女性解釈と一線を画してるのはココにあるんだと俺は思った。

つまり一言で言うならば、「自分を認めてもらいたいなら、認めてもらえるようなことをしろ」、コレに尽きると思う。グズグズと自己正当化をしてる、今のままの(ダメな)自分を認めてくれる女はむしろ男の敵なのです。そういう意味で南雲さんは本当の本当に理想で、南雲さんみたいな可愛い容姿の女性は現実には有り得ないけれども、南雲さん的存在になりうる女性(あそこまで手放しの好意を寄せてくれる人はいないにしても)は実は身の回りにたくさんいて、君が一歩成長すれば、君の傍にいる現実の南雲さんは、君を認めてくれるんだよ、という漫画なのだと思う。そこがすがすがしい。

そして、荻野君とは別のベクトルに向かった高井君には決して南雲さん的存在は現れないのだという、身の毛もよだつような現実がこれから突きつけられるのだと思う。とても楽しみな漫画です。古谷さんはすごい。

あと関係ないけどこれを読んでる最中、俺の中で田島さんはid:loomerさんのイメージだった。顔とかじゃなく。

逆リンク!
http://d.hatena.ne.jp/hotcake/20040414#p5
http://d.hatena.ne.jp/kanarara/20040414#1081950792
http://d.hatena.ne.jp/oneinchpunch/20040414#1081953845