オルファクトグラム

オルファクトグラム (上)

オルファクトグラム (上)

  • 作者:井上 夢人
  • 出版社/メーカー:講談社
  • 発売日:2005/02
  • メディア:文庫
オルファクトグラム (下)

オルファクトグラム (下)

  • 作者:井上 夢人
  • 出版社/メーカー:講談社
  • 発売日:2005/02
  • メディア:文庫

久しぶりに本読んで興奮したのでお知らせしますお。初版2000年なのでとっくに読んでる人も多いでしょうけども。

姉を殺害した犯人に、事件現場で襲撃された片桐稔は、その後遺症から通常の“匂い”を失い、イヌ並みの嗅覚をもつことに……。

という内容で、相変わらず井上夢人さんはミステリなんだかSFなんだか判断つきにくいものを書かれていて超絶好みでした。というか読んでる最中「ああ、これはミステリの皮をかぶらないと売れないという判断なのだろうな。明らかにミステリ要素を書いてる部分よりも、SF要素を書いてる部分の方が筆がノってる」と思った。つまりこれはSFです多分。それも超一級の。

で、イヌ並の嗅覚を人間が手に入れたとき、自分を取り巻く世界はどのように変化するかということが綿密に組み立てられていて、俺はアレを思い出した。多分ものすごく手に入りにくいでしょうけども、梅原克文さんの超傑作SF『ソリトンの悪魔 』であります。ソリトンの悪魔は音(というか音を伝える空気や水の波)によって周りを視覚化する装置が出てきて興奮した。イルカやコウモリがやっているヤツです。目はあんまり見えないんだけど、音波によって物体を感知するアレ。

オルファクトグラムは、匂いを嗅ぐことによって周りの全てを視覚化する男の物語です。で、これ、ちょっと考えてみればよくわかると思いますけども、イヌ並の嗅覚を手に入れた男の物語を頭の中で描いてみてください。多分ものすごく陳腐なものに成り下がると思う。小学生向けの月刊誌に、毎月10ページ程度で描かれるシリーズ漫画みたいな悲惨なことになると思う。でもそうはさせないのが井上夢人さんのジツリキなわけですよ。超脱帽。欲を言ったらミステリっぽさを捨てて、完全にSFとして描いてほしかったと思いますけども。

マジ、悪いことは言わないから読んだ方がいい。読書が苦手という人でも(文章が平易なので)グイグイ読める。もう1ページ目から釘付けになる。最後のページまで釘付けになる。『アルジャーノンに花束を』とか好む人にはさらにオススメできます。

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総員必読!