著作権とパクリと遵法と企業と個人のお話

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http://deztec.jp/design/05/06/20_copyright.html
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おおまかな流れとしては、「松永さんが海外記事を翻訳して自サイトに載せた」→「finalventyさん(愛称!)が翻訳権的にそれは違法と指摘」→「松永さんが持論を展開しつつ、翻訳記事を削除」→「徳保さんが、松永さんの行動を俺の名前を例に挙げて批判」→「しばさんが、松永さんとfinalventyさん(愛称!)のスタンスの違いを説明」

傍観していたら徳保さんに名前を出されてしまったので(この件では2回目!)、ちょっと思うところをつらつら書いてみます。長くなりそう。あと「テラヤマアニがマジレスしてると疲れてるように見える」とid:otsuneさんに言われてしまうので続きを読む記法で隠しとく。こういう「主張」っぽい話をネタ的に書くのはものすごく難しいんです(誤読されまくるから)! でもたまには主張もしたいっていう。ね。
ちなみにここでは翻訳権の話はしません。それは俺と関係ないので。

まず遵法精神のお話なのですけども、いきなりたとえ話にもってくと「あ、こいつバカだ」って思われますけども、たとえば賭博って、刑法では「五十万円以下の罰金又は科料に処する」ということになっているけども、実際の話、街の雀荘は野放しになっていて、たまーに思い出したように見せしめの逮捕とかが行われる。そんで、違法だとはわかっていても麻雀賭博をしたからといって「あいつは極悪人」と指さされるわけでもないし、自分自身極悪人だとは思えない。そういった罪に対して遵法精神を発揮できるかどうか、ということが常に俺の頭にはあって、グラビアアイドルの写真を無断で載せるのは(条件付きで)悪いこととはまったく思ってないわけです。違法であることは承知しているけども、法を守って我慢するほどのことではないという調子こいた考え方なわけです。

で、条件付きと言ったその中身なんですけど、それこそが倫理に関する話で、著作権・肖像権を侵害してなんでもかんでも載せちまっていいと思っているかと問われればそれは全く違う。最低限、「これは自分が撮影したものです」という顔は出来ないし(パクリ問題)、その写真によって本来著作権者が得るであろう金銭を横から掠め取るということも出来ない。また、肖像権を持つ人にとって著しく不利益となる改変なども出来ない。出来ないのは一定の倫理観が自分の中にあるからです。

具体的に言うと、写真集の中身をオリジナル同等の画質・サイズで全ページ自サイトで有料公開したら、これは明らかに著作権者の利益を損ねることになる。また、誹謗中傷目的で、オリジナル画像を醜く改変したら、肖像権者の不利益となる。そういうことはいくら知財にたかるダニを偽悪的に自称する俺でも出来ないです。

さらに言えることは、著作権法違反というのは親告罪であって、もしも著作権者が違反行為を認めたり黙認していたら、誰にも罰することは出来ないわけですよ。だから一見すると犯罪に見える行いが、結果的に著作権者の利益になっているような場合、黙認されるどころか著作権者に非公式に奨励されたりもする(この場合はもちろん罰せられない。犯罪として成立しない)。ここで重要なのは、建前として著作権者は「無断転載はいかなる場合も認められません」と言わざるを得ないということです。実際的な運用上、「ここまでは許せるけど、これは許せない」というのは明文化が非常に難しい。畢竟、著作権者は「全部禁止」と言うしかない。でも実際には許せるものと許せないものが存在するわけです。にもかかわらず、善意の塊みたいな人が、著作権者を差し置いて「それは著作権法違反です!」と騒ぎ立てるから、話が大きくなってしまって、著作権者としては建前上「うん、それは許せません」といわざるを得なくなる。心中「これは宣伝になるから黙認しておきたかったのだけどなあ……」と思っていたとしてもです。

なんか完全に盗人の論理になってきてますけど、そういったことが現実的には多々あるのではないかと俺は想像しているという話です。もちろん個々の著作権者によってこれは違っていて、たとえばジャニーズ事務所などはいついかなる場合も、企業個人を問わず、写真のWEB掲載を絶対に認めないし、見つけたら即座に警告するという強硬な態度をとっています。

で、盗人(俺)側からの実際的な運用を考えると、著作権者の逆鱗に触れない形とか、間接的に著作権者の利益に結びつくような形(宣伝に近い形)をとっている限り、いきなり逮捕とか巨額の損害賠償を請求されることはないだろうという打算の元、確信犯的に写真の無断転載を行っているわけです。だからいくら第三者に「それは著作権法違反」ですと指摘されても、「あ、わかってます」としか言わない。いや、不思議なことに、実際には俺が指摘されたことはほぼ皆無なのですけどもね。これは学生街の雀荘で点5で賭けている限り、逮捕されるなんてことはありえないことと本質的に同じです。でも万が一、著作権者から警告を受けたりすれば、それは著作権者にとって何か不利益だとみなされたわけですから、即座に引っ込めることは言うまでもない。そこをゴネて、「悪いことはしてない」と居直るような無茶な倫理ではないわけです。

あと著作権法の目的って一体何なの? という基本的な話をしたい。それは文化を守るためじゃないんですかね? 優れたクリエイターを守り、育てるためじゃないんですかね?

文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

って著作権法第一章第一節通則にはっきり書いてありますよ。たとえばJASらっCがやった悪行にこんなことがある。小学生の歌の会 幼稚園の演奏会で音楽流したら著作権法違反だから金払えと。アホかと。バカかと。そんなところに課金することが、音楽文化の発展にどう寄与するのかと。おまえらの利権を守るのに寄与してるだけじゃねーかと。著作権者は、小学生が歌うため 幼稚園児が音楽たのしむためなら喜んで著作権法違反を黙認するに決まってるだろうが。権利の委託を盾に、無茶な運用してるだけですよコレ。

俺が知財にたかるダニを自称してるのは、もちろん偽悪であって、本当に知財にたかってるのは、こうやって金の流れをコントロールするためだけに著作権法を悪用してる団体に他ならない。権利を委託すると、確かに便利で楽になるのですけども、委託した先が暴走を始めて、本人さえ意図してなかった過激な運用をしはじめても止めることが出来なくなるのです。頼まれてもいないのに「それは著作権法違反です」とネット上で過激な取り締まりを行ってる第三者の皆さんは、こういった権利委託団体(?)の片棒を担がないように気をつけていただきたい。「著作権法違反だからとにかくダメ」ではなく、それが文化の発展に寄与することなのかどうか、よくよく考えてもらいたい。あと著作権者の皆さんも、安易に権利を委託しないで、自分でできることは自分でやってもらいたい。

以前書いたエントリで、こんな肖像権の運用はどうかという提案的なものをした。もちろん穴がありまくりで現実的には何の効力も発揮しないでしょうが。

http://kowagari.hatenadiary.jp/entry/20041119/1100881994


しかし、穴がありまくりで、悪意ある人に抜け道を衝かれまくるこの提案も、こと、俺自身が従う限りは実に有効に働くのです。俺には悪意がないし、自分が持ち合わせている倫理を自分で破るわけがない。つまり俺は概ねこのガイドラインに従って画像の無断転載を行っている。先ほど言ったように、こういう縛りを設けている限り、いきなり逮捕とか損害賠償にはならないと踏んでいるからです。

最後に企業と個人の話。

俺が説明なしに個人サイトから文章や画像を無断転載しないのは、恐らくそうしたら「俺が作ったもの」と多くの人にみなされてしまうからです。これは著作権者の利益を著しく損ねる。個人サイトにとっての利益とは、ほとんどの場合金ではなく「これは自分が作った(書いた)ものです」と主張できる権利をもつこと、いわば小さなプライドのようなもの以外にないから。もちろん中には徳保さんのように「無断転載オールOK」を標榜しているところもありますけど、「はいそうですか」と、さも自分が書いたかのように無断転載したら、今度は転載するこちら側のプライドが傷ついてしまうのです残念ながら。だから出来ない。これはもう権利の話じゃないんですよ。プライドの話です。

で、企業のプライドというものはちょっと考えたことないですけども、企業の利益とはまさしく著作物によって金を得る権利だと思うので、最低限、企業が金を損するような形の著作権法違反は避けている。俺がアイドルの写真を載せることによって、どこかの企業が金銭的に損害を受けたと言ってきたら、もう平謝りで引っ込めます。その前にその企業に損害賠償請求されてるでしょうけども。

あと、仮に「おれはおまえのパパじゃない」が1日10万PVものサイトだったとしたら、日常的にやらかしてる写真掲載はやらないだろうし、それ以前に無理だろうなとは思う。見せしめのターゲットになることは間違いないから。でもあくまでもそれは見せしめに過ぎないと思う。