ヲタクによる非ヲタク洗脳

ありとあらゆるジャンルに当てはまる話として、ヲタの言説が非ヲタに響かないのは単にパッケージングの問題なのか、それともやっぱりそこには埋めがたい断絶があって、どのような方法をとっても無理なのか、ということを最近よく考えてるのですけど。

たとえばの話、鬼のようにすごいフランス映画ヲタがいるとしましょうか。フランス映画のことに関しては日本中どこを探しても右に出る者がおらず、ひとたび話し始めたら延々と数十時間フランス映画のことが語れて、なんなら一冊二冊の本は資料も見ずにサクサク書けるレベルで、日夜フランス映画のことを考えてはニタニタしている真性ヲタ。こういう人(仮に山崎さんと呼びます)が四六時中フランス映画の話をしてるのって、多分フランス映画に全く興味ない人にとっては耐え難いものになるんじゃないかなと思うわけです。何言ってるのかさっぱりわからなかったりとか。

フランス映画にビタイチ興味を持っていない俺が、超フランス映画ヲタの山崎さんの話を「ふむふむ、面白い」と思って聞くケースというのを想定すると、こんな感じになる。

まず山崎さんは四六時中フランス映画の話ばっかりはしていない。というか一見してフランス映画ヲタだとはわからない。昨晩やっていた深夜ラジオの面白いネタを話したり、山でお腹が減ってどんぐりを炒って食べたときの話をしたり、脂肪貯蔵に関係する遺伝子は脊椎動物ゲノムが地球上に現れた時から既に存在していたので糖尿病は5億年前から人類に運命づけられていたというわけのわからん生物学の話をしたり、mixiのコミュで「はじめましてトピ」を立てる人へのスマートな対処法を話したり、人間国宝に支給された助成金年額200万円のうち一体いくらが神楽坂のすし茶屋吟遊に消えているかという下種な話とか、とにかくなんかわからんけど大体話を聞いてると面白い。というような人。

そんなフランス映画のフの字も見せない超ヲタ山崎さんが「そうそう、フランス映画にこんな面白いのがあってね」って軽く10分ほど最強フランス映画の話をしたら、多分俺はやられる。聞き入ってしまう。全くフランス映画に興味なかったにも関わらず、観たいと思うかもしれない。ここでいきなり2時間みっちりフランス映画の奥の奥を説かれたら逆効果ですけども、10分なら聞ける。そんで、オススメを観て、そこからハマるかもしれない。わかんないけど。

こんな感じで、地下活動家によるオルグのような地道で回りくどい洗脳活動が必要だと思った。ただし多くのヲタは非ヲタを洗脳しようという意図はほとんどなくて、同調圧力に対しての「俺を迫害するな」とか「俺という存在も認めろ」といった抵抗活動や、ヲタのヲタによるヲタのための連帯強化活動にとどまるだけなので、山崎さん的な人がそれとわからない方法でステルス洗脳活動を行えばいいのにな、と思った。その必要性はないのだ、とヲタは言うかもしれませんけど。

追記:「フランス映画」はもちろん「エロゲ」に置き換えてもいいです。