WEBマネタイズの実態を知らずに買い叩こうとしてくる人たち

 

話はだいぶズレたところに飛ぶけど。

 

出版契約の内実

先日おれのところにも某出版社から本を出しませんかというオファーが来て、少しお話を聞いてみたことがある。その方は「え、そこまで読んでいただいてるの?」というくらいANAパパを隅々まで読んでくれていて、とても褒めてくれて、「この情報には出版する価値がある」と言ってくれてとても嬉しかったのだけど、気になる点がいくつかあったので疑問をぶつけてみた。

 

  1. 原稿執筆に見込んでいる日数と、出版までにかかるおおよその日数
  2. 印税等の契約内容
  3. どれくらいの部数で出版されるのか
  4. UUで線引きをしている意味

 

4番目が意味不明だと思うけど、これは先方が「PVではなく1日のユニークユーザー(UU)が7,000~10,000程度が、上から出版のゴーサインをもらうために必要」と最初のオファーで言ってきたため、こちらから意味を聞いたもの。

 

以下先方の回答。

 

  1. 一般的には約半年で制作。著者の書くスピードによるが、早い人なら1ヶ月でまとめる人もいる。2~3ヶ月で脱稿というのが多い。そこから編集~印刷にうつって、2~3ヶ月ほどで刊行という流れが一般的
  2. 発行部数×定価の10%が一般的。実用書に分類されるので、定価は恐らく1,400円~1,500円になる。
  3. 初版6,000~7,000が多い。
  4. 1日のUU平均14,000の人の本が発売3ヶ月で2万部を超えたことがある。本をきちんと販売していくために、そういう方々とご一緒に仕事させていただいている。

 

で、ここからわかることは、本を出版するためにはどんなに早くとも、1ヶ月間は執筆にかかりきりになること(おれは陸マイラーブロガーの中でもかなり遅筆な方なので1ヶ月では到底無理)。初版7,000部を1,500円で刊行した場合、印税は105万円になるということ。出版社は「固定読者を多く抱えているブロガー」を確保すれば、確実に採算ラインの7,000部を売り切ることができるということ。逆に言うと、それ以下では商売にならないので、そういう相手とは仕事をしたくないこと。

 

この「1ヶ月かかりきり」「半年後の出版」「報酬105万円」「出版社はUUの多いところを相手にしており、固定読者を購買層と想定している」というところがものすごくひっかかった。

 

確かに紙の本を出版すれば、世間一般からの評価は全く違ったものになる。名が売れ、信用度が増す。先日おれは雑誌のインタビューを受け、それが発行されたときに、このことを思い知った。みんな言うんだ。「すごい! 雑誌に載ったんですね!」と。

 

いや、何もすごくない。雑誌なんて、発行部数は数千部だ。そのうち、何人が当該記事を読むだろう。4割か、5割か。つまり、その記事を読むのは確実に累計1万人を下回る。それの何がすごいのか。そして報酬はインタビューのお車代程度。

 

対して、ANAパパは月間100万PV、月間UU30万。いや、ちょっと待って。これ、本当に自慢じゃなくて、ただ事実を羅列してるだけですからね。とにかく、1日に1万人が読みに来てくれてるわけだ。そして少なからぬ報酬をもたらしてくれている。

 

出版のデメリット

仮におれがこのオファーを受けた場合、この先の状況は容易に想像できる。

 

  • 1ヶ月間原稿執筆にかかりきりになり、ブログ更新はほぼできない。
  • せっかく書いたものも、半年後に出版されるので内容が陳腐化する可能性が高い。しかもネットと違って出版後の訂正はできない。
  • 初版7,000部は売り切ることができるかもしれないが、元々ニッチなジャンルなので重版はまず望めない。

 

一般的に言って1ヶ月間105万円の報酬が少ないとは決して言えない。でもね、一ヶ月に7桁稼ぐアフィリエイターなんて、掃いて捨てるほどいるんですよ。今はすでにそういう時代になってるんです。

 

そして、最も重要なことがもうひとつある。うちのブログは情報のすべてが無料だ。書籍に1,500円ものお金を払ってもらうには、今ブログで書いていること以上の情報を盛り込む必要があると思う。だけど、陸マイラー情報で、ブログに書いていないことなんてある? もうないよ。ほぼ全て書き切ったよ。これ以上のものを書こうとなったら、単純に1ヶ月の拘束というだけでは済まない負担がかかってくる。それは無理だ。

 

ブログの内容をただまとめるだけ、ブログより密度の薄いものを本にして、何の意味がある? だって出版社は、対象購買層をブログ読者と想定してるわけでしょ? でなければ、一日のUU7,000〜10,000なんて条件は付けないはずだ。要するに、熱心なブログ読者に売りつけようとしてる。その熱心なブログ読者に対して、内容の薄い、今までの焼き直しでしかないものを出せる? 少なくともおれは心情的に無理だ。そんなことできるわけがない。

 

でも出版社は、暗にそうしろと言っているんですよ。もうなんかね、こんなもん芸能人の商売じゃないですか。おれには芸能人みたいな価値はない。価値があるのは、おれ個人のパーソナリティではなく情報の方だ。無料で手に入る情報を1,500円で売りつけるほど面の皮は厚くない。

 

もうね、何から何まで出版社とこちら側の意図が合致しないんです。向こうは確実に売れるものを作って小金を稼ぎたい。こっちは報酬も見合わないし、固定読者に無価値なものを売りつけたくない。なんだこれ。

 

WEBマネタイズは10年前とは違う

旧世界にいる人たちとは、ネットのマネタイズに対する認識が恐ろしく乖離してるんです。それを彼らは全くわかってない。だから涼しい顔して、当たり前のように買い叩きにくる。もうね、そんな時代ではないんだ。「本を出してやる」「テレビに出してやる」。そんなことで大喜びできる時代ではないんです。

 

世の中には月に8桁を稼ぐアフィリエイターもいる。そういう人たちが、端金でサイトを売る? 売るわけがない。彼らの人生を賭けた、努力の結晶ですよ。

 

それを、WEBマネタイズの実態を全く知らない旧世界の人たちが買い叩こうととんちんかんなコンタクトをしてくる。

 

今まさに、世代は交代しつつある。彼ら旧世界の人たちはほどなく思い知るでしょう。時代は変わったと。