この記事で、こんなことを書いた。
なんであれ、そこに楽しさを見出せば、めんどくさいと思うことも、挫折することもありません。
その具体的なエピソードとして、こんなことを書いた。
たとえばですね、プリウスっていう車ありますよね。アレに乗ってるんですが、燃費の記録を塗り替えることが私にとってのゲームになったんですね。「今日はリッター30km走れた! もっと記録を伸ばすには、アクセルワークじゃない別の何かが必要だな」とか、攻略法考えるのが楽しいんです。記録が伸びるともっと楽しいんです。
で、読んだ人の多くは「こんなことの何が楽しいんだ? これのどこがゲームなんだ?」と思ったんじゃないだろうか。確かにちょっと言葉足らずだったと思う。なので、さらに踏み込んで、一見クソつまらないと思えることに楽しさを見いだす方法、ゲームとして楽しむ方法をさらに詳しく書いておこうと思う。
Winable
勝てないゲームはつまらない。勝てるゲームは面白い。
プリウスで燃費をよくする走りというものがあることを自分はネットの情報によって知っていた。ただし、その中身についてはよく読まず、知らないままにしておいた。初めから、このゲームには充分な勝算があったわけだ。
その走りを習得するまでには様々な失敗、回り道、困難があるかもしれない。しかしそれはゲームを面白くする要素に過ぎない。勝算があるときの失敗は、むしろ面白さを増幅させる。簡単に勝てるゲームではつまらない。勝てるけれど困難なゲームは面白い。
Novel
課題が陳腐な繰り返しのゲームはつまらない。課題が斬新なゲームは面白い。
プリウスで燃費を良くする走りをする方法は単純だ。
- なるべくEV(電動)走行の距離を伸ばす
これだけ。エンジンが回っていないときは当然ながらガソリンは消費されない。だから、エンジンは回さず、電動で走れば燃費はよくなる。しかし、EV走行を続けていると、充電がなくなってくる。これを回復する方法は2つ。
- エンジンを回して充電を回復する。
- 回生ブレーキをつかって充電を回復する。
ただし、エンジンを回せばガソリンが消費されて燃費が悪くなる。回生ブレーキというのは、単純に「ブレーキによって速度が減衰中は充電される」というものだ。ただし、ブレーキを踏み続ければ当然車は止まってしまい、EV走行の距離が伸びない。
- EVで走る→燃費が伸びる→充電が減る
- エンジンで走る→燃費が悪化→充電が増える
- ブレーキを踏む→燃費は変わらず→充電が増えるが車が止まってしまう
この3すくみの状況の中で、最適なバランスを取って、EVで走る距離をいかに伸ばすかということがこのゲームのキモになっている。面白い。あとは道路の状況に応じて、このような戦略をとっていくことになる。
- 下り坂はチャンス
下り坂はEV走行のままずっとブレーキをかけ続けることができ、大幅に充電を増やせる。 - 登り坂も悪くない
登り坂はEVでは所詮パワー不足なのでアクセルを踏むことになる。エンジンが回るので充電を増やせる。 - 平地はEV走行を伸ばす
平地は坂で貯めた充電を生かし、できるだけEV走行する。ずっと続く平地では、エンジンを最小限に回し充電、貯まったらEVを交互に切り替える。EV走行で使う電池量も最小限にする。 - スタートはゆっくり、ストップもゆっくり
スタートでエンジンを大きく回すと燃費が悪化する。EVでするするとゆっくりスタートし、徐々にエンジンに切り替える。ストップ時はなるべく長時間ブレーキをかけていることが充電に繋がる。
道路状況は次々に変化するので、その都度課題が変わる。「充電が減っている。ここはエンジンを回して充電に徹するべきだ」「次の信号はそろそろ赤になりそうだ。今は加速すべきではない」「1km先に長い下り坂があるから、そこまでに充電を使い切ってしまっても問題なさそうだ」「舗装状態が非常にいいので、最小限のEVでもスピードを落とさず走り抜けられそうだ」
知っている道路と、初めて走る道路とでも違う。先を読みつつ今すべきことがわかるので、知っている方が明らかに有利だ。知らない道路はチャレンジングとなる。課題が次々切り替わる。新たな課題が生まれる。ただし、課題に気付けなければ面白くない。決められたルールの中でも、斬新な課題や刺激は自ら設定できる。そうしなければつまらない。
Goals
目標のないゲーム、目標達成が不可能なゲームはつまらない。勝算があるゲームに設定する、達成可能な目標はゲームを面白くする。
プリウスでリッター30kmという目標を掲げた。実際には様々なコンディションによって変化するので、車を買ったときから現在までのトータル燃費でこれを達成するのはほぼ不可能だ。ただし、条件が整った1日に限れば、これは達成可能となる。たとえば「爽やかな温度、湿度のためエアコンを使う必要がない日」「ガソリンタンク内の燃料が少なく、車に積み込んでいる荷物も少ない日」「制限速度80kmの高速道路を70kmそこそこで走っても周りの迷惑にならない平日昼間」「平地だけでなく適度に坂道が含まれているルートを走る日」等々。
たまにこの目標を達成できると、誇らしい気持ちになる。幸せな気持ちになる。失敗しても構わない。別の日にまたチャレンジすればいい。重要なことは、自分以外の誰かが設定した目標ではないということ。たとえ自分以外の誰かが設定した目標であっても、自分自身が納得できていること。そうした目標を達成するのは何よりの喜びだ。
Feedback
結果が得られないゲームはつまらない。小さな結果であっても、それが次々に得られるゲームの方が面白い。
先ほどの次々に現れる課題は、ひとつひとつクリアする毎に「よし、今のはうまく行った! 充電を途切らさずに難所を抜けたぞ!」「読みが当たった。充電は切れたが、ちょうどここから長い下り坂だ」「充電充分で長い平地だ。どんどん燃費の数字があがっていってるぞ」という満足感を得られる。
その日1日の走りを終えて、燃費の数字を見てまた満足感を得られる。1ヶ月の給油の回数が減ったことに気付いて満足感を得られる。半年後、自分の運転スキルの向上を感じて満足感を得られる。急加速急ブレーキを避け、車の流れに乗ることを常に意識しているので、結果として非常に模範的な安全運転を自分がしていることに気付く。これを続けたら、ゴールド免許を取れるかもしれない。
小さな結果の積み重ねが、やがて大きな成果に結びついていることに気付く。ささやかな喜び、他愛もない結果でも、あるとないとでは大違いだ。得られた結果に対しては、自分の中でお祝いをする。小さな結果には小さなお祝い。大きな結果には大きなお祝い。どんどんゲームをすることが楽しくなってくる。
ゲーム化
おれが「プリウスの燃費」をゲームに見立てたように、ありとあらゆることをゲーム化することができる。というか、ゲーム化しないと面白くない。
- 勝算
- 課題
- 目標
- 結果
こう単純化すると、実に恐ろしいことに、あの面白いゲームと、クソつまらなくてできれば早く帰りたい仕事、早く辞めたい仕事とは、構造が同じだ。でも中身をひとつずつ見ていくと違っている。
仕事には勝算のない闘いが実に多い。課題はルーティンで新たなものがなかなかない。目標は大きすぎるか、曖昧。結果はなかなかついてこないか、年に1回と低頻度。これで面白いわけがない。しかしこれは与えられているからであって、与えられたものの中に自分で勝算と課題と目標と結果を新たに設定すればゲーム化できる。面白くすることができる。
なんでいきなりこんなことを書いたかというと、本の受け売りをしたかったから 笑。ある本を読んでたら「あれ? これっておれがプリウスでやってたやつじゃん」って思ったから。
自己啓発本って、著者の個人的な経験談に過ぎないものを一般化してるだけなんじゃないか? 歴史や哲学を根拠にエビデンスのないことを言ってるだけじゃないか? じゃあ成功のエビデンスって一体なんなんだ? ってことを書いてる本。数多ある成功法則の中から普遍性を抽出してる本。
この本の第3章「勝者は決して諦めず、切替の早い者は勝てないのか」の一節に、ゲームに見立てるという一見バカげた戦略が実に有効だってことが書かれてた。努力=つらい、ゲーム=面白い、という相反するものを、努力=面白い、に変える。
面白いは正義。