フランク・ダラボン『ミスト』を観てきた

いやーごめんなさい、観るのが遅すぎた。仮に俺の書く映画レビューを読んで、「観たい!」って思ってくれる人がいたとしても、もう公開終了です。日本でも北米でもぜんっぜんヒットしなかったみたい。あっというまに打ち切りという感じ。それもむべなるかなという感じだったのですけども、これは本当に俺内映画史において、絶対欠かすことの出来ない1本となる傑作でしたよ。DVD絶対買います。

まず俺がこの映画を推す理由を3つ挙げます。

  1. 極限状態における人間心理を描くための道具立てが徹底的に超常現象寄り
  2. 全編これ絶望
  3. アレがでかい

まず1ね。極限状態における人間心理を描く際に、何もゾンビだとかそういう超常現象をもってくる必要はないんですよね(この映画にゾンビは出てきません。念のため)。たとえば戦争とか。たとえば自然災害とか。たとえば豪華客船の沈没とか。そういう道具立てで、充分描ける。というかむしろそういう方がウケがイイ。だってじゃあゾンビとか出てきた瞬間「はいはい、ゾンビ映画ね」ってレッテルぺったり貼りつけて、観もしないで、内容わかっちゃった気になる人が、山ほどいるじゃないですか。これは明らかに損。観る前から観客を選んじゃうんだから。日本公開時に巧妙にそういう道具立てを隠した宣伝をしていたことからもよくわかる。

でもね、俺はそういう道具立てが死ぬほど好きなんだよ! B級設定なのに、志の高い内容を目指してるやつらに最大級の敬意を払ってんだよ。

フランク・ダラボンさんつったらもうとにかく大傑作『ショーシャンクの空に』が頭に浮かんじゃうんだけども、元々ダラボンさんって、鬼のようにB級寄りの人なんですよね。ダラボンさんにおけるショーシャンクが、ちょうどシャマランさんのシックスセンスに相当する感じ。その作品を中心に語られちゃうんだけど、本質はそこじゃないんだよ、実はこっちのドB級設定の方が描きたかったんだよ、みたいな。「普通の映画も撮れますよ。実際撮ってヒットさせましたよ。だから後は好きなもの撮らせてよ」みたいな。

今回ミストにおけるドB級設定がいかなるものであったかは実際映画を観ていただきたいのだけど、シャマラン映画と違って、いきなり序盤から超常現象にアレルギー起こす人には「ぇ〜…」ってなるような直球が投げ込まれてるので、思う存分げんなりしてほしい。バカ! げんなりすんな。喜べ。でも内容的にはB級では決してないんです。道具立てに騙されるな。

次、2の絶望ね。もう俺がいかに絶望マニアであるかは、ここ「おれパパ」で繰り返し繰り返し書き続けてるので今回は端折るけど、ミストの絶望はただごとじゃないぜ……。詳しくは書けないのだけど、違った意味の絶望が襲ってくる。こんな絶望はいかな絶望マニアの俺でもいやだ。

関係ないけど、主演のトーマス・ジェーンさんって、同じスティーブン・キングさん原作の『ドリームキャッチャー』にも出てて、否が応でもあの映画を思い出しちゃうんだけど、ドリームキャッチャーを陽とすると、ミストは徹底的に陰です。どっちも大好き。

次、3ね。とにかくアレがでかい。クローバーフィールド(俺内で超面白かった)のアレも相当にでかかったけど、ミストに出てくるアレはあんなもんじゃありませんぜ。俺に言わすと、「やっとこのでかさまで来たか」という感じです。けども、まだまだだ。もっと! もっとでかく!

とにかくひとつ言えることは、シャマラン映画とダラボン映画が嫌いだという人とは俺は友達になれない、ということです。うん。