モーニング娘。 2 物語を補完するということ

あと一撃を喰らったら完全にパーティが全滅するという、Wizプレイヤーにとっては悪夢のような事態が起こった際、ギリギリのHPで最期に残った一人が敵を倒し命拾いをする、という奇跡を多くのWizプレイヤーが経験する。プレイヤーの中で、それは伝説となる。パーティを救った英雄として、そのプレイヤーの中でだけ、一生想い出に残るキャラになる。

こんなときでも画面に現れる情報は少ない。Wizというゲームの中に、予め用意された物語はない。「パーティを救った英雄」という物語は、100人のプレイヤーがいたら100通り存在する。

モーオタさんが経験するモー娘体験というのもそれぞれが違っていて、ある人はTVの中での誰某と誰某のやりとりから、ある人は限定された人数だけが参加できたイベントから、ある人は奇跡的に街で偶然出会ったメンバーとの会話から、物語を紡ぐ。デビューから売れるまでの成功の軌跡だったり、メンバー間のライバル関係であったり、新メンバーと旧メンバーの軋轢や溝であったり、卒業後のメンバーの活躍や凋落であったり、楽曲と踊りを中心としたユニットとしての成長であったり、雑誌に載ったメンバーの何気ない一言から想像されるプライベートであったり。

そこからありとあらゆる物語が紡がれ、全モーオタの物語の総和としてモー娘は存在する。