受験の昔話

俺はエスカレーターで大学に入ったので受験といったら高校受験しかないのだけど、受験会場に向かう電車の中で震えが来るくらいの主役感を味わって驚いたことを記憶している。電車を埋め尽くす人の群れがまるで自分を支える大勢の脇役のように思えて、それはもちろん錯覚であり驕りなのだけど、一瞬であれ世界が自分を中心に回っていると感じられたことは幸福な体験だと思った。芥川賞を受賞することやメジャーで首位打者になることは、この数百倍の主役感があるだろうから、多分自分だったら6時間ぶりに帰宅した飼い主に出会った子犬のようにおしっこもらしちゃう。ジョー。