海外旅行傷害保険について −大人なのでクレジットカードの付帯保険を勉強してみました−

今まで海外旅行に行っても保険のこととかビタイチ考えてなかった子供だったんですけども、「アメリカだと治療費で100万200万の請求はざらだよ」という話を聞いて震え上がり、きんたまが縮んだので、大人になるために勉強しました。熟知してる人からすれば何を今更的な話ばかりなのですけども、恐らくこのレイムダックブログおれパパを定期的に読んでる皆さんの中にはクレカヲタや陸マイラーは少ないと思いますので、俺が知り得た範囲内でいろいろ書きます。異常に長いです。

この記事を読むべき人たち

  • 2年に一度くらいは海外旅行に行ったりする
  • 旅行のときはツアー会社が手配してくれる旅行保険にその都度加入している
  • クレジットカードを作ろうと思っている。もしくは数枚持っている

この記事を読まなくていい人たち

  • 海外旅行には絶対行かない
  • クレジットカードは絶対持たない
  • 自己再生の能力者であり事実上不死身の体をもっている

では本題です。



クレジットカードの中には海外旅行保険が付帯するものがあるので、AIUとか普通の旅行保険に入らずに、クレカの付帯保険だけでまかなうのもひとつの手だよ、というのが今回の主題です。「いや、それだけじゃ不十分だよ。やっぱ普通の旅行保険にも加入しとくべきだよ」という意見もありましょうが、そこらへんは各々判断してくらさい。

ほいで、クレカに付帯する海外旅行保険で最も大事なことが2つある。これだけ覚えて今日は帰ってください。

  1. とにかく傷害・疾病の保険金額が一番大事
  2. 自動付帯じゃないと意味がない

クレジットカードの付帯保険を比較してるサイトの中には「死亡・後遺障害」の最高額をクローズアップしてるところも多いんですけども、「うおー!1億かよ!」とか、ここだけ見ても全然意味ない。死んじゃったらそこで試合終了ですし。普通に生命保険入っとけばいいんじゃないですかね。まずは旅先で病気になったり怪我したときの治療費をなんとかしなきゃいけない。海外、異常に高いですからね。ニューヨークで盲腸手術とかになったら、一泊入院で退院しても300万(!!)くらい取られる。払えませんよ、保険ナシでは。

これをカバーするのは「死亡・後遺障害」じゃなくて、「疾病治療」とか「傷害治療」の方。ここの数字に注目しなきゃいけません。

「死亡・後遺障害」はついてるけど「疾病治療・傷害治療」の保険がついてないっていうクレカも結構あるのでちゃんと調べておかなきゃいけない。調べました? ついてました? ついてないなら、ついてるカードを作った方がいい。それもなるべく保険金額が高額のものを複数。

傷害によって死亡したり後遺障害が起きた場合は、複数持っているカードのうち最も金額の高いものを限度として支払われるので、死亡・後遺障害で1億のカードを3枚4枚持っていても意味ない。1億以上は出ない。じゃあ一枚だけ持ってればいいじゃん、って思うかもしれないけど、それは違います。

「死亡・後遺障害」以外の場合*1は複数のカードを持ってると実際かかった費用を上限にどんどん加算されていくので、複数持つ意味が出てくる。たとえば傷害・疾病治療費の保険金額200万円というクレジットカードを5枚持ってる人は1000万円まで補償されることになるので、たとえ長期入院で治療費が900万円かかったとしても全然へっちゃらなわけです。

で、こうやって複数のカードの「疾病・傷害治療」を加算していくためには、付帯条件が「自動」じゃないと都合が悪い。「自動付帯」じゃなく「利用付帯」という条件のカード(楽天カードなど)もあって、この場合は旅行のために自宅を出発してから日本を出国するまでの公共交通機関(電車とかバスとか)を当該カードで決済するか、あるいはツアー代金を当該カードで事前に決済しておかなきゃならない。それぞれ別のカードを使ったとしても、2枚しか加算できないわけです。それに対して「自動付帯」の方は、カードの名義人が海外旅行に行きさえすれば無条件で保険が付帯されるので、とにかくカードを所有さえしていればOKっていう。これなら何枚でも加算できる。

大体利用付帯っつっても、都内の人とか空港までの交通をカード決済するのがそもそも難しいでしょ。カード決済できる交通機関て新幹線くらいしか思い付かんもん。Suica付きのクレカでSuica決済してもダメですからね。それはクレカで決済したんじゃなくてチャージしたSuicaで決済してるわけだから。自家用車で空港まで行く人もアウト。ツアー代金もカード決済をしてくれない旅行会社がいくらでもあるし、そもそも航空券とホテルを自力手配する人にとってはツアー代金というもの自体が存在しない。利用付帯の条件を満たすのは結構厳しいんです。

ここまでいいですか? おさらい。死亡・後遺障害の保険金額がめちゃめちゃ高いプラチナカードを一枚だけ持つよりも、自動付帯で疾病・傷害治療費の保険金額がそこそこ高い年会費無料カードを複数持つ方が断然イイわけです。あとは細々したことを書いときます。

自動付帯のカードを複数持つなら、発行会社が重複しないように注意

このへん、クレカヲタじゃないと一番理解に苦しむ部分なんですけど、とにかく発行会社(イシュアー)が重複してると、疾病・傷害の治療費は加算されない場合が多いんです。例外もあるけど、各発行会社の規約を見ても容易に判断つかない場合がほとんどで(それどころか電話で訊いても要領を得ない場合がほとんど)、実際保険金を請求した時点で初めて判明するという感じです。なのでここは確実性を高めるために発行会社がかぶらない方向でやるのが得策。。発行会社っていうのは、たとえばセゾンとかニコスとかオリコとかジャックスとかのこと。それに対してJCB、VISA、MASTER、American Express、Dinersとかは国際ブランドと言います。ややこしいのは、国際ブランドのうち、JCB、American Express、Dinersは同時に発行会社でもあるということ。

「俺、セゾンAmerican Expressカード持ってるんだけど、コレの発行会社はセゾンなの?アメックスなの?」この場合はセゾンが発行会社です。セゾンカードに、American Expressという国際ブランドがのっかってると考えてください。与信審査とか実際にお金を立て替えたりの業務はAmerican Expressじゃなくクレディセゾンがやってます。

発行会社を手っ取り早く知るには、カード裏面に書いてある「お問い合わせ先」の会社名を見ることです。

国際ブランドは重複しても全然大丈夫だけど、発行会社はかぶらないようにしておくのが得策です。確実に保険金額を加算できます。

ゴールドカードはどうなん?

「年会費無料カードにも海外旅行保険「疾病・傷害治療」が自動付帯で保険金額200万というものはかなりの数あるので、わざわざ保険のために高い年会費払ってゴールドカードを持つ必要はないんじゃないか。ゴールドカードのくせに疾病・傷害が200万止まりのやつとか結構あるよ?」とも思っちゃいますけど、子供連れの家族にとっては意味はある。ゴールドカードの場合は家族特約付きのものが多いから。カードを持てない年齢の子供はこれでカバーします。カードを持てる年齢の家族には、年会費無料の平カードから家族カードを発行してしまうのがいい。家族特約だと半額しか出なかったりするけど、家族カードは本会員と同じ額出る。

また、ゴールドカードは海外旅行傷害保険に限らず国内旅行傷害保険まで自動付帯だったり、その他にもいろんな種類の保険やサービスがついてたりするので、それらと年会費、還元率等を考慮に入れて総合的に評価すべき。フルに利用すれば年会費なんて元が取れてさらにお釣りがくるという感じのものも多い。

カード付帯じゃない普通の旅行保険に加入する意味って?

クレジットカードに付帯される保険ではほとんどカバーされない分野がいくつかある。

  • 疾病死亡
  • 航空機預託手荷物遅延
  • 航空機遅延

同じ死亡するのでも、事故などで死ぬのと、病気で死ぬのとでは扱いが違うんですよ。年会費の安いクレジットカードで疾病死亡が自動付帯するものは多分見つからないと思う。疾病死亡もカバーしたいならAIUなどの普通の旅行保険に入った方がいい。

自動付帯のクレカを複数枚持っているなら、損保ジャパンの「新・海外旅行保険【off!(オフ)】」というのを使うと、カードで足りない部分だけを補う保険がオーダーメイドできるのでオススメ。

遅延系の保険金額はたかが知れてるし、実害も大したことなかったりするのであえて付ける必要もないんじゃないかと思います。やっぱ病気や怪我の治療費の方が何十倍も大切。

自動付帯って、本当にただ持ってるだけでいいの?

一度もカード決済したことがなくても、旅先にカードそのものを持って行かなくても、全然平気です。でもカードを手元に持ってないとデスクの電話番号とかわかんないし、わかったとしても自分のカード番号を伝えなきゃいけないから、急な入院では非常に困る。カード番号とヘルプデスクの電話番号を暗記してるなら持っていく必要すらありません。あなたが旅行に出発した瞬間から保険がついてます。ただ、旅行期間があんまり長いのはさすがにカバーできない。30日とか90日とか、そのカードによって違うので、長期旅行の場合は適用期間を調べておく必要があります。

結局どのカード作ればいいわけ?

面倒臭いことが大嫌いなおまえらのために、不詳俺がどのカードを作ればいいか手っ取り早く教えて差し上げます。詳しい人から見れば「いや、こっちのカードの方がいいでしょ」っつー意見もたくさんあるでしょうが、バーン!と自信満々で提示されたモノを何も考えずに申し込みたいというニーズもあろうかと思うので。

なお、これらのカードはあくまでも「とにかく持ってるだけで充実した旅行保険がついてくる」という観点で選んでいるので、ガンガン決済してポイント還元を狙うことに向いてるわけではないことに注意。そっちは還元率の高いカードを選んでください。海外での「傷害・疾病」でどれだけ補償してもらいたいかによって、最大800万円までカバーできるように200万のカードを4枚選んでみました。元々持ってるカードに付帯保険があるなら、4枚も申し込む必要は当然ありません。なお、間をあけずに4枚立て続けに申し込んだりすると「多重申込」と言って、審査が通りにくくなるので注意。半年くらい間をあけるとまた審査が通りやすくなります。

横浜インビテーションカード

    • 発行会社ジャックス
    • 家族カード含めて年会費永年無料
    • 海外旅行傷害保険"自動"付帯 傷害・疾病200万
    • 国内旅行傷害保険"利用"付帯 入院日額5千 手術20万
    • ショッピング保険利用付帯

多分年会費無料カードで最強。国内旅行保険の傷害・疾病が利用付帯なので新幹線のチケットこれで買えばちょっとだけ安心*2。カード審査が通りにくい主婦の人も、夫を本会員として家族カードを発行すればいいので、夫婦で自動付帯保険を手に入れられる。

オリコカード

    • 発行会社オリコ
    • 家族カード含めて年会費永年無料
    • 海外旅行傷害保険"自動"付帯 傷害・疾病200万
    • シートベルト障害保障

家族カードあり。国内旅行傷害保険も利用付帯であるんだけど、残念ながら傷害・疾病をカバーしてくれない。国内は死亡・後遺障害だけカバーとなる。シートベルトについても死亡・後遺障害のみカバー。オリコで年会費無料のものはほとんどリボ専用カードなんだけど、毎月のリボ額を最大にしておけばいいし、そもそも使わ(アワワワワ

TSUTAYA Wカード

    • 発行会社アプラス
    • 年会費永年無料
    • 海外旅行傷害保険"自動"付帯 傷害・疾病200万

国内旅行傷害保険も利用付帯でついてるけど、こちらも死亡・後遺障害のみカバー。 ロードサービスも付くが、ただ「呼べる」というだけで実費は負担させられるのであんまり意味ない。家族カードはないが、審査は甘いので作りにくい人も突撃推奨。Tポイントは汎用性が非常に高く、事実上日本一のポイントプログラムになってるので、持ってて損はない。特にTSUTAYAをよく利用する人は。

E-NEXCO passENEOSカード

    • 発行会社ニコス
    • 年一回利用があれば家族カード含めて年会費無料
    • 海外旅行傷害保険"自動"付帯 傷害・疾病200万
    • ロードサービス

発行会社が同じニコスなので、重複しないようにどちらか一方だけ作ればいい。ガソリン代を節約したいならENEOS、ETC料金を節約したいならE-NEXCOを作ればいい。両方とも年会費がかかるんだけど、いずれも最低年一回決済に使えば無料になるので、実質的には年会費無料と思っていい。家族カードも作れるし、審査も甘め。ロードサービスについては、ENEOSカードが無料で自動付帯。E-NEXCOはカード利用かETCカード利用のいずれかが年一回あれば無料で付帯。E-NEXCOはETCカードを利用中に料金ゲートに衝突した場合見舞金1万円がもらえるというサービスもついてる。

ニコスカードは2010年7月1日より、海外旅行傷害保険が自動付帯から利用付帯に条件変更されます。また同日より、200万円あった傷害・疾病・救援者費用保険金額が100万円に減額となり、オススメカードから脱落です。

ニコス亡き後、「自動付帯」「傷害・疾病ともに200万円」「年会費無料」の3条件を全て満たす代替カードとしてオススメできるのは以下。ただしこれらもいつ条件変更されるかわからないので動向には注意が必要です。

  • AMDAカード(発行会社 全日信販)オススメ
  • EPOSカード(発行会社 エポスカード)家族カード不可
  • 龍馬カード(発行会社 ライフカード)但し、前年1回以上の利用で年会費無料

追記:内容ほぼ一緒ですが、2015年版も書きました。

kowagari.hateblo.jp

*1:「死亡・後遺障害」以外のモノとは「疾病治療」=病気の治療費、「傷害治療」=怪我の治療費、「賠償責任」=他人を怪我させたり他人のモノを壊して損害賠償請求されたときの費用、「携行品被害」=自分の荷物が壊れたり盗まれたりしたときの損害費、「救援者費用」=大怪我してしまって、家族などを現地に呼び寄せなくてはいけなくなったときの渡航・宿泊費用、などがある

*2:国内旅行保険は保険金がおりる条件自体が異常に厳しいので、実はあんまり意味ありません。乗ってた電車が脱線して怪我したとか、泊まった旅館がガス爆発して怪我したとか、割とありえない条件ばっかり。